(9)「研究会と団塊ジェネレーション」の中心は?

 「研究会と団塊ジェネレーション」というテーマにそって、雑文を書いてきましたが、自分が「団塊」の中に入るからといって、団塊の代弁でもするような書きようになってしまったところがあるとすれば、軌道修正しなければなりません。それと「研究会と団塊ジェネレーション」というテーマ設定には、「定年」になる団塊世代が教育の境界研究会とどういう関係にあるのかあいまいです。「定年」は教員という職業の「定年」ですが、研究会を「定年」になるわけでもないのですが、なんとなくそれと重なってしまっているようなところがあります。まあ、現役でなくなると教員はとたんに現場感覚を失ってしまうから、発言や書くことにも緊張感が失われてしまって、研究会も「定年後」状態になるのではないか、という危惧ならわかりますが。(まあ、ずうずうしい私でも、退職したら現場の話など書けなくなってしまうだろうな、という予感はありますが。)
 たぶん、中心の問題は以下のようなことなのでしょう。
 教育の境界研究会の源流をたどれば、1960年代から70年代のいわば「全共闘の時代」「解放闘争の時代」の雰囲気を生きてきた世代の教育運動に行き着くでしょう。そうであるならば、そうした時代や世代が持ってきたものが、現在の研究会のスタイルにも残っているかもしれません。それはいったいどういうものであるのか。その積極的な側面と負の側面を、当事者に総括していただかなければならない、と。
 まさか団塊世代の昔話をみなさんが聞きたいと思っているわけではないでしょう。さらに、研究会からの「退職」ではないのだとすれば、この総括は、中間総括にほかなりませんから、そうした総括をふまえた「展望」が示されなければならないことになりましょう。「展望」なしの「総括」は引退興業になってしまいます。私的に「私の定年後」などと題してぐちゃぐちゃ書いている場合ではなくなります。
 「自分から出発するという全共闘的な方法が、自分の生理感覚から見えるものだけを見る、さらには自分自身に対する不安を糊塗するために、ちょっとでも見えたものに独善的に固執するという現在の通弊に帰結したのだという因果もたどれないことはない。」(小阪修平『思想としての全共闘世代』ちくま新書 2006.8)
 教育の現場感覚にこだわるこの研究会のスタイルももしかすると全共闘世代の負の遺産かもしれない、という想定はしてみる必要はありそうです。小阪も全共闘世代ですから、その時代の遺産をすくい取ろうとします。

 上下関係や指揮命令系統はなく、自分が発言したことに責任を負う。逆から言うと言い出しっぺを尊重するし、実際に行動している人間を多少考えが違っても尊重する。手作りの組織であり、効率や効果という点では限界を持っているが、柔軟な組織である。何かの目的に従属するのではなく、物事を出発点から考える発想、当事者を重視する発想がそこにはある。全共闘運動とは、運動することそれ自体が態度の表明であり、意味をもつ運動だといえるかもしれない。たしかにそこで生じる混乱をふくめて、物事は計画通りにはいかない。だが、結果よりも今何をおかしいと感じているかといった発想が全共闘の出発点である。課題があるから共闘し、そのために組織は必要なのであって、組織の維持は目的ではない。(小阪 同書 P.214)

 このところは、もちろん小阪は全共闘という組織の肯定的な側面を語っているところです。「ことばで抽出するならば、自発性・現場性・当事者性・対等性を重視した運動形態こそが全共闘の本質なのである。・・・・・・・・70年代以降の市民運動や日常的な活動、他人への態度のなかに、全共闘運動の特徴は十分とは言えないかもしれないが、受け継がれていったのだとぼくはかんがえている。」
 私たちの研究会もこうしたDNAを引き継いでいるところがあるかもしれません。問題はこうした特質の裏面が直ちに負の遺産になってしまうところなのではないでしょうか。現場性へのこだわり、当事者主義、そして後の世代への継承など頭にはない「対等性」が、なにも生産しなかったと非難される全共闘世代の負の側面を裏張りしているのかもしれないからです。

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